QBハウスを展開しているキュービーネットの財務状態と経営成績を分析

美容室/理容室業界で上場している企業は、5社のみとなっています(19年2月現在)。その中でも最も成長が著しいのはヘアカット専門店「QBハウス」を運営するキュービーネットホールディングスです。昨年3月に上場を果たしたばかりですが、消費者の節約思考と時短ニーズに応えることで、国内事業を中心に業績を急拡大させています。企業価値を表す時価総額においては、美容室業界で上場している他4社の合計時価総額を上回っており、19年2月現在、その時価総額は2位のアルテサロンホールディングスの約5倍を誇ります。

美容室/理容室業界で上場している企業は5社のみ

今回の記事では、19年2月時点の最新の決算資料をもとにQBハウスを展開するキュービーネットホールディングスの財務状態と経営成績を分析しながら、直近の業績ハイライトや主な経営指標をご紹介致します。

第2四半期までのサマリー

キュービーネットホールディングスは2月15日、2019年6月期第2四半期の連結業績を発表しました。累計での売上収益は100億9200万円(前年同期比5.0%増)、営業利益は8億4900万円(同8.7%減)、純利益は5億8200万円(同2%減)と、増収減益になりました。

売上は増加していますが、利益率が減少していることになります。こちらの原因としては2つの要因が説明されています。
①上場後は退職率の低減に成功し、採用も好調に遷移した結果、キュービーネットホールディングスが戦略的に先行投資している「店舗人件費」が増加しています
②前年同期はまだ未上場でしたが、今期では上場に伴い販売費及び一般管理費が増加しています
どちらの理由からも、利益率の減少は展開事業の収益性悪化に伴うものではないことが伺えます。 

では、決算説明会で紹介された取り組み及び業績推移の詳細を見ていきましょう。
※以下、図表は決算説明資料から抜粋

採用力強化及び退職率低減

上場後は退職率が低減し、採用も好調に推移しているとのことです。離職率が高いサロン業界は人材獲得競争も激しいですが、今期は上場企業といった新たなブランディングが人材獲得に好影響をもたらしています。

現社長の北野さんが入社されたときには、急成長の陰で従業員の半分近くが辞めていく異常な状態にあったキュービーネットですが、「社員を幸せにする会社でありたい」と考える北野流の働き方改革は10年以上も前から進められており、上場後も更に低減傾向が継続できています。

QB HOUSEの退職率低減

サロン業界は採用難ですが、退職率の低減に加え、採用が好調に推移したことによって、 本社スタッフを除くサロン従業員数は1年間で+178人(正社員+161人、パート+17人)の純増を達成しており、驚異的な採用実績を残しています。

QB HOUSEの従業員数推移


計画通りの店舗展開

新規出店

新規出店に関しては、QB HOUSE形態で14店舗の新規オープン(移転1店舗含む)、リニューアル19店舗、 増席2店舗があり、貸主都合による閉店5店舗のみと着実に店舗網を広げています。
QB HOUSEの新店舗

上記の画像からは、QB HOUSE新規店舗は14店舗中11店舗がショッピングセンター内であり、ショッピングセンター内での新規出店に注力していることが伺えます。 

更に、FaSS形態では18年10月に2店舗を新規オープンしています。Fassはキュービーネットホールディングスが展開するQB HOUSEとは別事業の店舗です。1080円(19年2月から1200円)カットのQBハウスとは異なり、20分の施術時間を目安に2000円(税抜き)でより丁寧なカットに加え、ドライヤーやコテを使ったスタイリング、ワックスなどでのセットも提供する形態の店舗です。

海外展開に関しても、引き続き積極的に店舗展開を進め、台湾では、18年11月に「新竹巨城店」を新規オープン。 香港では、18年12月に「シャーティ ンプラザ店」を新規オープン。 アメリカ(ニューヨーク)では、2018 年9月に3店舗目をウォール街に新規オープンし、3ヶ月で3店舗と引き続き積極的に店舗展開を進めています。

既存店の業績

低価格カットサービスには同業他社の参入も増え、競争が激化していますが、上手く既存点の売上は維持できており、既存店に関しては、前期に引き続き前年比100%超えが継続し、好調に推移したとのことです。

QB HOUSEの既存店売上推移

営業利益の増減分析

主に先程述べた国内の退職率の低減及び採用の好調推移が原因で売上原価の人件費が増加し、結果として売上総利益(粗利)に関しては、前期比+18百万円(+0.8%)と微増しています。

QB HOUSEの売上総利益(粗利)

営業利益に関しては、想定範囲内の販売費及び一般管理費の増加に伴い減益しており、前期比-81百万円(-8.7%)となっています。

QB HOUSEの営業利益


グループ連結財務概要

連結財政状態計算書ハイライト

QB HOUSEの連結財政状態

有形固定資産は57百万円増加していますが、こちらは新規出店及び店舗リニューアルに伴う設備投資の増加によるものです。その他の金融資産での67百万円の増加も新規出店による差入保証金の増加に伴うものです。

連結キャッシュ・フロー計算書ハイライト

QB HOUSEの連結キャッシュ・フロー計算

有形固定資産の取得による支出で156百万円の増加がみられますが、こちらは新規出店及び店舗リニューアルに伴う設備投資の増加によるものです。

通期達成に向けた取り組み

既存店に関しては人員の増加及び価格改定の実施で、さらなる売上成長を目指しています。価格改定については、2019年2月1日より国内QB HOUSEでは実施済みであり、通常価格は税込1,080円から税込1,200円に、 シニア価格(平日利用のみ・65歳以上)は税込1,000円から税込1,100円に値上げされています。
また、国内の店舗拡大戦略も変更がなく、 QB HOUSEは年間27店舗の新規オープンを、FaSSは年間4店舗を計画しています。

海外進出戦略も引き続き強力に進められております。香港は年間5店舗(既に2店舗の新規オープン済み)、シンガポールは年間2店舗、台湾は年間3店舗、アメリカは年間2店舗、と合計で、海外年間12店舗の新規オープンの計画が変更がないまま推進されています。
香港ではワンランク上の「QB PREMIUM」(2号店)の出店を、シンガポールでは「QB HOUSE Premium」1店舗、「Kids」1店舗の出店を計画しており、 各国に合わせたかたちで業態を増やすことにより、収益向上を図っています。また、既に25店舗を展開する台湾では、既存店の生産性向上に取り組み中とのことで、既存店舗の売上向上にも力を入れています。

最後に

社員を幸せにする会社でありたい
キュービーネットホールディングスの今期業績予想に関しては変更がなく、当記事の冒頭で説明した利益率の減少はあるものの、売上収益204億600万円、営業利益19億円、純利益12億2600万円を見込んでいます。

10分1000円のカット専門店というコンセプトで拡大してきたキュービーネットホールディングスですが、昨年上場を果たし、その進化は未だに続いており、「20分2000円」といった女性をターゲットにしたFassや海外展開などと新業態を次々に展開しております。競争が激しいサロン業界の中で、会社を上場まで導いた北野社長は、 労働環境改善を重視し、「社員を幸せにする会社でありたい」といった執念を抱き、「平凡なようだが10分を極め、いつまでも成長する人がたくさん生まれて欲しい」といった願いで、合理的な事業拡大と同時に人材が安心して勤務できる環境づくりに配慮しています。

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