TAYAを展開する株式会社田谷の経営計画と経営成績を分析

全国に「TAYA」や「Shampoo」等の美容室チェーンを展開する株式会社田谷ですが、1997年9月に美容室業界初の東証一部上場を果たしています。「Hair&Make EARTH」を展開するアースホールディングスや「Ash」等を展開するアルテサロンホールディングスと異なりフランチャイズ形式店舗はなく、全サロンを直営で展開しているのが、田谷の特徴です。 

TAYAのロゴ
出典:tayanet.jp

美容室業界では、いち早く上場した田谷ですが、ここ数年は赤字決算の計上が続いており、店舗数、客数、売上はともに減少傾向となっています。今回の記事では最新の経営計画や報告書を元にTAYAを展開する株式会社田谷の直近の業績ハイライトや施策、主な経営指標等をご紹介致します。 


企業理念及び経営方針 

田谷の経営の基本となる企業理念及び経営方針は以下となっております: 
企業理念:
  • すべての人に夢と希望を与え社会に貢献する 
経営方針: 
  • 現場第一主義の徹底 
  • 社会的責任の認識と遂行 
  • 価値の創造 
  • 最強の美容組織の形成 

中長期経営計画

中長期経営計画

田谷では2012年5月7日に中長期経営計画「MLP2019」を公表しています。慢性デフレ状態の当時に策定されたこの中長期経営計画では、事業基盤を強化し、経営の効率性と安定性を高め、成長戦略への展開を図れる企業体質を構築するための「方針と目標」が決められていました。 
そちらの期経営計画はこちらのリンクから確認可能となっております:

上記の中長期経営計画に関しては、修正が行われ、改めて(今期を最終年度とする)2016年度~2018年度中期経営改善計画が策定されています。 
ここでは、その概要を簡単にご紹介します。 

中期経営改善計画の概要 

新たな計画では経営環境が厳しさを増している状況を改善するため、2つの取り組みを推進することが決められています。「顧客への特典の利用促進や商品販売の増加により客単価を向上させ、売上高を確保する」とともに「不採算店舗の閉鎖や移転を行う一方で既存店舗を改装することにより店舗収益の改善を強化していく」が推進される取り組みとなります。
更に、システム化による本部機能の集約化を進め、小さな本部を目指し、コスト削減計画を推進することも決められています。これらの取り組み組により早期に業績改善を行い、経営の効率化と安定性を高め、成長戦略への展開を図れる企業体質を構築することが目指されています。 

上記の「収益体質への早期転換」及び「事業基盤の再構築」を重視して新たに策定されたのが2016年度~2018年度の中期経営改善計画です。 
この経営改善計画では具体的な取り組み項目を以下4つの軸に分けて推進する計画です。 
  • 人事施策 
  • 営業施策 
  • 店舗施策 
  • コーポレート施策 

2018年度上期の振り返り 

2018年度上期の振り返り

2018年度は前述しました中期経営改善計画の最終年度となります。当期の第2四半期累計期間(上期)時点での田谷の進捗及び取り組みサマリを見ていきましょう。 
※内容は主に18年11月27日に公開された第45期中間報告書を参考に作成しております 
※以下、表は中間報告書から抜粋 

売上サマリ 

当社の第2四半期累計期間の業績としては、売上高4,894百万円(前年同期比8.3%減)、営業損失55百万円(前年同期は営業損失64百万円)、経常損失58百万円(前年同期は経常損失71百万円)となり、四半期純損失は83百万円(前年同期は四半期純損失106百万円)となっています。 

店舗収益の改善 

店舗に関しては、美容室1店舗の改装を実施し、美容室8店舗をブランド転換しているとのことです。また、不採算店舗の美容室を3店舗(Shampoo ススキノラフィラ店、クレージュ・サロン・ボーテ イオンモール熱田店、クレー ジュ・サロン・ボーテ 丸井錦糸町店)閉鎖し、当第2四半期会計期間末時点での店舗数は、美容室123店舗と小売店1店舗となっており、減少しています。 

施策振り返り 

ボンドカラーの採用 

ボンドカラーの採用
出典:tayanet.jp

田谷はカラー料金の通常価格にプラス¥2,000(税別)で利用可能なボンドカラーを発表しています。ボンドカラーはスマートボンドを利用しており、従来はダメージが気になって挑戦できなかったハイトーンカラーにも挑戦して貰うこと、そして結果的に客単価を上げることが目的となっています。 

※スマートボンドはロレアルから発売されているケア剤です。ダメージを引き起こす、毛髪内部の損傷した結合に着目されて開発されています。主成分のジカルボン酸(毛髪補修成分のマレイン)が傷んだ髪内部の結合を補強・補修し、髪を強くしなやかにする美容室向けのヘアケア製品として紹介されています。 

ヘア&メイクアップコンペティションでのグランドチャンピオン獲得 

田谷では美容室ブランディングの一貫として数年前から、積極的にアジア最大のコンテストである全アジアヘア&メイクアップ コンペティションに出場し、何度もグランドチャンピオンを獲得できています。大手の強みを活かせて、東京予選では数百人のTAYAスタッフが参加し、アジア大会にも数十人のスタッフを参加させることで、優勝確率を上げています。 

6月に香港で開催された今年の大会にも、日本予選を勝ち抜いたTAYAスタッフが31名出場し、TAYA中野マルイ店のクリエイティブデザイナー槙田峰晃さんがグランドチャンピオンに輝きました。 

グループ限定のオリジナル商品展開 

TAYAのオリジナル商品
出典:club-mariquita.com

顧客への商品販売の増加を推進している田谷では、グループ限定のオリジナル商品開発に力を入れており、季節毎に数量限定の商品を発売しています。 

2018年秋季限定商品 

毎秋に限定発売されているオレオボタニカシリーズはシャンプー・トリートメント・ボディーソープの3商品のセットとなります。毎年、パッケージや香りを工夫していますが、効果は大きく変わらず、高い保湿力が特徴となっています。 

商品の紹介としては、使用されているラズベリーとストロベリーエキスが地肌や髪を保湿し、髪や肌のダメージを集中補修します。また、グレープシードオイルとオイルケラチンの2つのオイル成分が髪にまとまりと潤いを与えるとのことです。 

2018年冬季限定商品 

こちらも新発売ではなく、毎冬に期間限定で発売される商品となっています。乾燥シーズンに合わせてお肌や髪のコンディションを頭から指先までトータルにケアすることを目的としており、シャンプー(200ml)、トリートメント(150g)、ボディソープ(400ml)のセットで¥3,900(税別)とサロン専売商品としてはミドルレンジの価格帯といえます。こちらのラインナップの代表成分はモリンガオイル配合とPTグリチルリチン酸2K配合となっており、それ以外にも3つの特徴成分としてオレンジフラワー水、マルチセラミド、オイル成分が配合されています。 

財務諸表

次に財務諸表で経営状況を確認してみましょう。 

貸借対照表 

総資産の残高が前期の2,465百万円から2,382百万円と減少しています。説明されている主要因としては、業績悪化による現金及び預金の減少、売掛金の減少、店舗数縮小による敷金及び保証金の減少等があります。  
TAYAの貸借対照表


損益計算書 

売上高は前期の5,337百万円から4,894百万円と443万円減少しています。中期経営改善計画の最終年度として客単価向上の各施策に取り組んだ結果、客単価は増加しているとのことです。そうなると、一部の店舗数縮小等により、客数が大幅に減少していることになります。報告書では売上高減少の主要因が「デザイナーの退職等に伴う顧客離れ」と説明されています。 

TAYAの損益計算書


また、前期は4,692百万円(売上高の87.92%)だった売上原価が、今期は4,301百万円(売上高の87.88%)となっています。ですので、売上原価を減少させ、結果的に売上総利益を増やす施策はまだ大きな効果が見られていないといえます。 

キャッシュ・フロー計算書

会社が本業の営業活動からどれだけのキャッシュを稼いだのかを示す営業活動によるキャッシュ・フローは197百万円から74百万円と前期比で-37.56%と大きく減少しています。報告書ではその原因が「減価償却費、 売上債権の減少」と説明されていますが、4割近くの大幅減少は田谷の美容室事業が決して順調に推移していないことを意味します。
TAYAのキャッシュ・フロー計算書

最後に 

いかがでしょうか?美容室業界ではお客様の強い節約志向の高まり、店舗間競争の激化、労働需給逼迫による美容師確保難などと経営環境としては非常に厳しい状況が続いています。その中で環境変化に上手く対応できなかった田谷は慢性赤字状態に陥っていることが分かる内容となっておりました。一方、「【経営者必見】美容室Ashでのグーグルマイビジネス活用」の記事でご紹介したアルテサロンホールディングスは最新のIT技術を取り込むことで、美容室業界が不調の中、とても対照的な状態となっており、好調に業績を伸ばしています。競争が激しい美容室業界ですが、変化に柔軟に対応できる美容室は引き続き拡大が期待できます。
まだ赤字となっている田谷に関しても、赤字幅の減少を実現していますし、 徐々に施策の効果が出つつあります。全店舗直営である強みを活かし、迅速な経営方針決定ができるのが田谷の強みとなります。 既にオリジナル商品や客単価向上などといった改善施策は功を奏していますので、今後の業績回復が期待できます。大手美容室チェーンの競争はますます激化していくでしょう。

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