利益は結果なのか。それとも目標なのか

他業種に比べて利益率が低い、儲からないと言われる美容室ですが、幅広く美容室を見ると非常に多様な形態があり利益構造も様々だなと感じることがあります。

1000円カットが代表的ですが、低価格でお客様の回転数を稼ぐことによって利益を上げていく事業モデルもあれば、髪質改善サロンに代表されるような1回の施術単価が数万円にもなる事業モデルなど、同じ美容室として事業を一括りに考えるのはかなり無理があります。

そんな中で今回は利益について考えてみたいと思います。

利益、損失、損益分岐点


利益は最終結果?

シンプルにスタートさせてみましょう。

利益=売上 - 費用

利益はざっくりと上の数式で表現できます。数え切れないほど多くのビジネス書でもこのように表現されていることが多く、違和感なく受け入れることができます。
この計算式が意味するは、「売上からかかった費用を引いた”余り”が利益である」ということです。

つまり、利益は最終的に残ったものであり、コントロール可能なものではなく、結果に過ぎないという考え方です。
そのため、利益をあげる方法を考える際に、「どのように売上を上げるか」「どのように費用を下げるか」という2つの独立した事象に焦点が当たり、それぞれの詳細なアクションを考えることになります。そして、それぞれのアクションを精査し、このプランだと売上がXXX円上がりそう、経費がYYY円下げられそう、と目標を立てて実行、結果的に利益がZZZ円増えたという形になります。

同じ方向性ではありますが利益自体が結果に過ぎないので、目標に置くのは売上だという考えもあります。とにかく売上をあげよう、売上目標はいくらだ、などのようなケースは美容室に限らずよくみられることです。

売上と費用の推移を説明している画像


利益起点に考えてみる

しかし逆に、利益を最初の起点にスタートさせてみるとどうなるでしょうか?数学的には同じことを表現しているので屁理屈のようにも聞こえるのですが、今回のメインテーマです(似たようなモノの見方の転換はトヨタ生産方式の祖でもある大野耐一さんの本にも度々出てきますので、ご興味ある方はぜひ読んでみることをお勧め致します)。

利益を起点に考える場合、最初に設定するのが利益になります。つまり、今期はXXX円の利益を出す、1店舗あたりの月次の利益はYYY円にする、などです。

利益を最初に設定すると何が変わるのでしょうか?事業自体には事業によって様々な制約条件があります。美容室であれば「席数」「スタッフ人数」など、多くの事業としての制約条件があります。この制約条件の中でも設定した利益目標をどのように実現するのか、という出発点でそれまでの「売上を向上させるアクション」や、「費用を削減するアクション」の枠にとらわれない発想を実現しようというものです。

例えばですが、以下の利益目標と制約条件で考えてみましょう。
  • 目標利益は1ヶ月に200万円
  • 1店舗で席数は4席
  • スタイリストの人数は3人
  • 営業日数は25日
仮想的な目標と制約条件ではありますが、あえて利益を高く設定してみました。このような利益目標が極端に高く提示された場合に、どのように制約条件を乗り越えて行く必要があるでしょうか。

まず、一般的に美容室で行われている技術・サービスの提供という観点で事業を捉えてみると、「席数」と「営業日数」によって、同時に来客していただけるお客様の数が制限されます。

次に変動させることのできる制約条件は「技術の単価」と「1日の回転数」になります。この2つは連動していることが多いので、同時に考えていきましょう。「技術単価」を考える際に、利益起点に考えているので、その技術を提供する際の利益がいくらなのかを事前にいくつかのパターンで計算しておきます。そして、粗くても良いのでそれぞれでの実現可能な回転数を計算します。そして、その「技術単価」と「1日の回転数」を計算することによって、1ヶ月の達成可能な利益の最大額が計算できます。

利益の最大額が計算できたところで、その数字が最初に立てた利益目標に到達しているのかが次に重要なポイントになります。目標に達成していない場合は、技術単価と回転数を見直すことになります。この、最初に設定した目標利益と個別の具体策を検討し最大利益を突き合わせることで、目標利益に到達し得ない施策を最初から排除することができるのです。

目標利益が極端に高い場合は、これまでの美容業界での常識を壊していく必要もでてくるかもしれません。例えば、技術単価を極端に高くする、回転数を極端に高くする(1000円カットはその観点からは画期的な発明だと思います)、そもそも技術サービスを受けるお客様からお金を取らないで代わりに広告を美容室に掲載するためのスポンサーを募るetc... 目標次第では手段を柔軟に捉えて広げていく必要があります。

イノベーション

スタッフへの給料は削減可能な固定費なのか?

なぜ利益から考えるのか。それは利益自体が会社が社会から必要とされているかどうかの指標であるからです。利益を生み出すことで未来に向けた投資を行うことも可能になり、会社のミッションを達成できます。ケースとして取り上げた例では極端に単純化していますが、同じように目的をどこに置くか考えてからスタートすると、自分たちのやるべきこと・やってはいけないことが整理されることが多々あります。

とある経営者の方の話ですが、「業界平均の給与所得がXXX万円だけども、自社の社員の給料をYYY万円以上支払いたい。そのためには1人あたりZZZ万円の売上が必要で、会社の利益率は??%必要、それが実現できないことはやらない」と断言していました。利益を売上と費用の引き算から計算する発想とは根本的に異なるもので、「必ずこの結果を実現したい、なので会社の利益もこれだけ必要だ」という発想は非常に納得できる考え方でした。

単純化したケースでしたが、利益を起点に考えを進めてみることで、最後は何を会社として実現したいのかというところに行きつきました。なぜこの金額設定なのだろうか?どのような理由で歩合率が決まっているのだろうかなど、0から考えて見るとまた違った考えが見えてくるかもしれませんので1度お試しください。

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